従業員が病気の治療や育児、家族の介護のため、勤務時間を短くしたり残業を減らしたりすることがあります。その結果、給与が大きく下がっても、これまでは社会保険料の計算に使う「標準報酬月額」がすぐには下がらない場合がありました。

そこで2027年1月から、一定の要件を満たした場合に、通常より早く標準報酬月額を引き下げることができる新しい特例が始まります。

厚生労働省リンク:「療養、育児又は介護により報酬が急減した者についての健康保険法及び厚生年金保険法の標準報酬月額の保険者算定の特例について」

■翌月から標準報酬月額の変更が可能

通常の月額変更では、固定的賃金の変動があり、その後3か月間の給与を確認したうえで標準報酬月額を変更します。

新しい特例では、治療・育児・介護と仕事を両立するため、本人と会社の合意により労働時間の短縮や残業の抑制などを行い、その結果として給与が大きく下がった場合、一定の条件を満たせば、給与が下がった月の翌月から標準報酬月額を引き下げることができます。

また、通常の月額変更と異なり、固定的賃金が変わっているかどうかは問いません。

■対象となるためには3つの要件がある

特例を利用するためには、主に次の3つの条件を満たす必要があります。

  • 治療・育児・介護と仕事を両立するための就労調整が行われていること
  • 給与の減少により標準報酬月額が2等級以上下がり、その状態が3か月以上続くと見込まれること
  • 本人が特例の利用について書面で同意していること

対象となる「療養」には本人の治療だけでなく、家族の治療に伴う看護なども含まれます。育児は小学校就学前の子の養育、介護は要介護・要支援認定を受けている家族の介護が対象です。

■会社は本人への説明と書類の保存を忘れずに

この制度を利用すると、現在の給与額に合わせて社会保険料を早く引き下げることができます。

一方で、標準報酬月額が下がることによって、将来受け取る厚生年金額が少なくなる可能性があるほか、傷病手当金や出産手当金にも影響する可能性があります。

そのため会社は、こうした影響を本人に十分説明し、書面による同意を得る必要があります。

手続きの際には「被保険者報酬月額変更届(特例改定用)」と「申立書兼同意書」を提出します。また、出勤簿や賃金台帳、療養・育児・介護の事実を確認できる書類などは、届出から2年間保存する必要があります。

【まとめ】

  • 給与が下がった翌月から標準報酬月額を引き下げられる場合がある
  • 「2等級以上の低下」「3か月以上継続する見込み」「本人の書面同意」がポイント
  • 社会保険料だけでなく、将来の年金や各種給付への影響も説明する

2027年1月から始まる今回の制度は、治療・育児・介護のために働き方を調整した従業員の負担を軽減し、仕事との両立を支援するための仕組みです。
従業員から治療や育児、介護を理由とした勤務時間の変更について相談があった場合には、勤務方法だけでなく、社会保険の取扱いについてもあわせて確認しておきましょう。