Q.同じ月に「A手当が増額」「B手当が減額」となり、標準報酬月額が2等級下がることがわかりました。この場合、月額変更届は必要でしょうか?
A.増減した固定的賃金を合計して、「固定的賃金全体として増えたのか、減ったのか」を確認します。固定的賃金全体が減額し、その後3か月の平均による標準報酬月額も2等級以上下がった場合は、原則として月額変更の対象となります。
■手当ごとではなく「固定的賃金全体」で判断
社会保険の標準報酬月額は、固定的賃金に変動があり、一定の要件を満たした場合に「随時改定(月額変更)」が行われます。なお、「固定的賃金」とは、基本給や各種手当など、支給額・支給率があらかじめ決まっている賃金のことを指します。
ここで迷いやすいのが、同じ月に複数の手当が変更されたケースです。
例えば、
- 役職手当 20,000円 → 30,000円(+10,000円)
- 職務手当 40,000円 → 20,000円(▲20,000円)
となった場合です。
役職手当だけを見れば「昇給」ですが、2つを合計すると固定的賃金は10,000円減っています。このような場合は、個々の手当の増減ではなく、同じ月に発生した固定的賃金の増減を合算して判断します。
標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集でも、同一月に固定的賃金の増額と減額が同時に発生した場合は、固定的賃金の総額が増額したのか減額したのかを確認するとされています。
■固定的賃金が減り、標準報酬月額も2等級下がれば対象
先ほどの例では、固定的賃金全体として10,000円の減額となっています。
そのうえで、変更後の給与が支給された月を含む3か月間について、すべての月で支払基礎日数が要件を満たしており、その3か月間の平均報酬額により算定した標準報酬月額が従前より原則2等級以上下がれば、随時改定(月額変更届)の対象となります。
つまり、
- 固定的賃金 ↓
- 3か月平均による標準報酬月額 ↓
と、両方が同じ方向に動いていることがポイントです。
月額変更を判断するときは、「標準報酬月額が2等級変わった」という結果だけを見るのではなく、その原因となった固定的賃金がどちらの方向に動いたのかも確認する必要があります。
■固定的賃金が増えているのに2等級下がった場合は?
反対に、
- 役職手当 20,000円 → 50,000円(+30,000円)
- 職務手当 40,000円 → 30,000円(▲10,000円)
であれば、固定的賃金全体では20,000円の増額です。
ところが、その後に残業が大きく減ったなどの理由で、3か月平均による標準報酬月額が2等級下がったとします。
この場合は、
- 固定的賃金 ↑
- 3か月平均による標準報酬月額 ↓
となり、変動の方向が一致していません。
そのため、2等級以上下がっていても、原則として随時改定の対象にはなりません。
なお、増額した手当と減額した手当が同額で、固定的賃金全体として変動がない場合も、原則として随時改定の対象にはなりません。
まとめ
同じ月に複数の手当を変更した場合は、次の順番で確認すると分かりやすくなります。
- 増減した固定的賃金をすべて合計する
- 固定的賃金全体が「増額」「減額」のどちらかを確認する
- その方向と、3か月平均による標準報酬月額の2等級以上の変動方向が一致しているか確認する
手当の新設・廃止や賃金制度の変更を行った場合は、月額変更届の対象となる可能性があります。給与計算の際には、単に給与総額だけを見るのではなく、「どの固定的賃金が、いつ、いくら(何円)変わったのか」を記録しておくことが大切です。

