Q.保育園へ送迎するため通勤距離が長くなります。会社は増えた距離分まで通勤手当を支給する必要がありますか?

A.法律上、保育園への送迎によって増えた距離分まで、必ず通勤手当を支給しなければならないという決まりはありません。会社の就業規則や賃金規程で、「自宅から会社までの合理的・経済的な経路」を基準とすると定めているのであれば、原則としてその距離を基準に通勤手当を計算することができます。ただし、実際の通勤経路と労災保険上の「通勤」の考え方は別に整理する必要があります。

■通勤手当は会社の規程を確認

労働基準法には、すべての会社に対して通勤手当の支給を一律に義務付ける規定はありません。

そのため、会社が通勤手当を設ける場合には、

  • 自宅から会社までの距離で計算する
  • 最も経済的かつ合理的な経路で計算する
  • 公共交通機関の定期代を支給する
  • マイカー通勤は距離に応じた定額とする
  • 支給上限を設ける

など、その会社のルールを定めることになります。

なお、通勤手当について就業規則や賃金規程に定めている場合には、当然、その規程に沿って支給する必要があります。また、賃金の決定・計算方法は就業規則の記載事項とされています。

例えば、自宅から会社までが10km、保育園を経由すると12kmになる場合でも、規程上「自宅から会社までの合理的な経路」を基準としているのであれば、10kmを通勤手当の算定距離とすることは可能です。

■保育園経由でも通勤災害になることがある

ここで注意したいのが、「通勤手当の対象となる経路」と「労災保険上の通勤経路」は同じではないということです。

労災保険では、住居と就業場所との間を「合理的な経路及び方法」で移動していることなどが、通勤と認められるための要件となります。

厚生労働省の通達(行政解釈平27・3・31基発0331第21号)では、他に子どもを監護する人がいない共働きの労働者が、子どもを託児所や親族宅などに預けるために通る経路について、就業のためにとらざるを得ない経路として「合理的な経路」と認められる旨が示されています。(労働者災害補償保険法の一部を改正する法律等の施行について)

したがって、「会社に届け出た直行ルートと違うから、保育園への送迎中の事故は通勤災害にならない」と一律に判断するものではありません。

実際の経路や送迎の必要性などを踏まえて判断されます。

■「手当の計算」と「実際の経路」を分けて管理する

会社としては、次のように整理しておく方法がわかりやすいでしょう。

通勤手当の算定→「自宅から勤務先までの最も経済的かつ合理的な経路」で計算する。
実際の通勤経路→ 保育園への送迎など、日常的に利用している経路も申告してもらう。

こうしておけば、保育園への送迎距離まで通勤手当に含めなくても、会社として実際の通勤状況を把握することができます。

事故が発生した際にも、「通常は保育園を経由して出勤していた」という事実確認がしやすくなります。

なお、労災保険上も、通勤のため通常利用する複数の経路や、通勤のためやむを得ず通る経路については「合理的な経路」と認められる場合があります。(労働局所在地一覧)

まとめ

  • 保育園経由で増えた距離まで通勤手当を支給する法律上の一律の義務はない
  • 会社の通勤手当規程に基づいて支給距離を決める
  • 通勤手当の支給経路と、労災保険上の通勤経路は別に判断される

「会社への届出経路と違う=通勤災害にならない」わけではありまえせん。実務上は、通勤手当を計算するための経路と、従業員が日常的に利用している実際の通勤経路を分けて把握しておくとよいでしょう。この機会に、通勤手当規程や通勤経路の届出書が、実際の働き方に合った内容になっているか確認してみてはいかがでしょうか。