Q.従業員50人未満の企業の労務管理として、最低限何をすればよいですか?

A.大きく分けると、①毎月行う給与・勤怠・社会保険等の管理、②入社・退職・労災などが発生したときの随時手続き、③年度更新や算定基礎届など、毎年決まった時期の手続き、④従業員数によって新たに発生する義務の4つあります。①から③までは50人未満であることで違いはありません。④の従業員数による手続の違いについて抑えておきましょう。


■毎月・随時確認しておきたい労務管理

給与・勤怠管理

毎月の給与計算だけでなく、労働時間、時間外労働、休日労働、深夜労働などを確認し、割増賃金を正しく計算します。
出勤簿・賃金台帳・労働者名簿といった法定帳簿の管理も必要です。

また、年次有給休暇についても、付与日数や残日数だけでなく、年10日以上の年休が付与される労働者について「年5日の取得義務」を満たしているかを確認しておきましょう。

社会保険・税

健康保険・厚生年金保険料の納付、雇用保険料の控除、住民税の特別徴収、源泉所得税なども毎月発生します。
給与計算ソフトを使用している場合でも、毎年の料率変更が正しく反映されているか確認することが重要です。

入退社など随時発生する業務

従業員を採用した場合には、

  • 労働条件通知書・雇用契約書
  • 社会保険資格取得届
  • 雇用保険資格取得届
  • 雇入れ時健康診断

などを確認します。

退職時には、社会保険・雇用保険の資格喪失、離職票、源泉徴収票などの手続きが発生します。

また、固定給に大きな変更があった場合には、社会保険の月額変更届(随時改定)が必要になることがあります。
時間外・休日労働をさせる場合には36協定も必要です。36協定には有効期間があるため、毎年更新時期を管理しておきましょう。


■年間労務スケジュール

●1~2月

年末調整後の事務が中心となります。
給与支払報告書や法定調書・源泉徴収票などを作成し、税務署や市区町村へ提出します。

また、休業1~3日の労働災害が前年10~12月に発生している場合には、労働者死傷病報告を翌年1月末までに行います。
※2025年1月から労働者死傷病報告は原則として電子申請となっています。

労働保険料を3期に分けて納付している会社では、第3期の納付もあります。


●3~4月

春は各種保険料率の変更に注意する時期です。

協会けんぽの2026年度健康保険料率・介護保険料率は、2026年3月分(4月納付分)から変更されています。
さらに2026年4月分からは、新たに子ども・子育て支援金の徴収も始まりました。協会けんぽでは2026年度の支援金率は0.23%です。

雇用保険料率についても4月から変更されることがあるため、新年度ごとに確認しましょう。

4月末には、1~3月に発生した休業1~3日の労働災害について、労働者死傷病報告の期限を迎えます。


●6~7月

労務担当者にとって最も手続きが集中する時期の一つです。

労働保険年度更新の申告

2026年度の年度更新期間は、2026年6月1日~7月10日でした。
前年度の賃金を集計し、確定保険料と新年度の概算保険料を申告・納付します。

住民税の変更事務

市区町村から届く「特別徴収税額の決定通知書」に基づき、6月分から新しい住民税額に切り替えます。

算定基礎届の届出

社会保険では4~6月の報酬をもとに標準報酬月額を見直します。

2026年度の算定基礎届の提出期間は、

7月1日~7月10日

でした。(年金機構)

決定された新しい標準報酬月額は、原則として9月分の社会保険料から適用されます。

高年齢者雇用状況等報告

意外に見落としやすいのが「高年齢者雇用状況等報告」です。こちらは50人以上ではなく、常時雇用する労働者が21人以上の企業が対象です。
なお、雇用している高齢者が0人でも、報告が必要です。

ちなみに、2026年の報告期限は7月15日でした。


障害者雇用状況報告

2026年7月1日から、民間企業の法定障害者雇用率は2.5% から 2.7%へ引き上げられました。これに伴い、対象企業の範囲も、常用雇用労働者40人以上から、(2026年7月1日以降) 37.5人以上に広がっています。

2026年6月1日時点の障害者雇用状況報告については従来の40人以上が基準でしたが、今後は37.5人以上というラインを意識する必要があります。

なお、障がいのある従業員を雇用していなくても、報告する義務があります。


●9月

算定基礎届によって決定された新しい標準報酬月額が9月分から適用されます。

給与から翌月控除している会社の場合には、一般的に10月支給給与から新しい社会保険料へ変更します。
給与ソフトの設定変更漏れがないか確認しておきましょう。


●10~11月

毎年秋には地域別最低賃金が改定されます。

最低賃金は時給者だけの問題ではありません。月給者についても、月給を1時間当たりの賃金に換算して最低賃金以上になっているかを確認する必要があります。

また、7~9月に休業1~3日の労働災害が発生している場合には、労働者死傷病報告を10月末までに行います。

労働保険料を分納している会社では、第2期の納付時期にも注意しましょう。


●11~12月

協会けんぽや健康保険組合から被扶養者の状況確認が届いた場合には、収入状況や同居・別居などを確認して回答します。

12月には年末調整を行い、翌年の給与支払報告書や法定調書作成の準備を進めます。

冬季賞与を支給した場合には、賞与支払届を支給日から5日以内に提出することも忘れないようにしましょう。


■「50人未満」であっても人数別に課される義務

従業員数については「50人」という基準で見ないことが重要です。

常時10人以上→就業規則の作成・労働基準監督署への届出

常時21人以上→高年齢者雇用状況等報告の対象

常時37.5人以上→2026年7月以降、障害者雇用率制度の対象

常時50人以上→衛生管理者・産業医の選任、衛生委員会の設置など

というように、制度ごとに基準が異なります。

また、常時50人以上になると定期健康診断結果の労働基準監督署への報告も必要になります。
一方、健康診断そのものは50人未満であっても実施義務があります。


■50人未満のストレスチェックも2028年から義務化

これまでストレスチェックは、常時50人以上の事業場が実施義務、50人未満については努力義務とされてきました。

しかし法改正により、2028年4月1日から50人未満の事業場についてもストレスチェックが義務化されます。
2026年現在はまだ努力義務ですが、小規模事業所についても実施体制を検討しておく必要があります。

なお、2026年4月から義務が拡大された男女間賃金差異・女性管理職比率の情報公表については、常時雇用する労働者101人以上の企業が義務対象です。
100人以下については努力義務となっています。


まとめ

従業員50人未満の会社であっても、年間を通じてさまざまな労務管理が必要です。

  • 年度更新・算定基礎届・年末調整など「毎年決まった時期」の手続きを年間予定に入れておく
  • 10人・21人・37.5人・50人など、従業員数(常時雇用労働者数)によって新たな義務が発生することを把握する
  • 入退社・労災・月額変更など「随時発生する手続き」を漏らさない仕組みをつくる

会社の規模が大きくなると、ある日突然、新しい義務が発生することがあります。
とくに従業員数が30人を超えてきた会社では、「まだ50人になっていないから大丈夫」ではなく、今後どのような手続きが増えるのかをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な事業所を前提とした整理です。業種、有害業務の有無、社会保険の適用状況などによって必要な手続きが異なる場合があります。