毎年7月に提出する算定基礎届。算定基礎届の結果、9月分から社会保険料が変わる従業員もいます。では、標準報酬月額が決定されたとき、会社はその内容を従業員へ通知する必要があるのでしょうか。

Q.年金事務所の調査で、社会保険料の変更通知を行っているか確認されました。社会保険料の変更は社員に通知する必要があるのでしょうか?

A.はい。事業主には、決定された標準報酬月額を従業員本人へ通知する義務があります。日本年金機構から「標準報酬月額決定通知書」が届いた場合、事業主はその内容を速やかに被保険者へ通知しなければなりません。「給与明細を見れば社会保険料が変わったことが分かるから、それでよい」というものではありません。標準報酬月額の決定内容について、本人が明確に確認できるようにしておく必要があります。

■標準報酬月額の「決定・改定」は通知対象

日本年金機構では、事業主が被保険者へ通知しなければならない事項として、次のようなものを挙げています。

  1. 被保険者の資格取得または喪失
  2. 標準報酬月額の決定または改定
  3. 標準賞与額の決定
  4. 適用事業所以外の事業所が認可を受けて適用事業所となったこと
  5. 上記(4)の適用事業所が認可を受けて適用事業所以外の事業所となったこと
  6. 適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者が認可を受けて厚生年金保険の被保険者となったこと
  7. 上記(6)の被保険者が認可を受けて被保険者の資格を喪失したこと

このうち、毎年の算定基礎届によって行われるものが「2.標準報酬月額の決定」です。

例えば、

従前の標準報酬月額 300,000円
定時決定後     320,000円

となった場合、原則として9月分から320,000円の標準報酬月額をもとに社会保険料が計算されます。

この決定内容について、会社から従業員へ通知する必要があります。

また、標準報酬月額が前年と同じだった場合でも、算定基礎届による「定時決定」自体は行われています。そのため、変更があった人だけではなく、決定内容を本人へ通知する運用にしておくと確実です。

■通知方法に決まった様式はない

従業員への通知について、「必ずこの書式を使わなければならない」という決まりはありません。日本年金機構では、通知方法は任意としつつ、「明確かつ確実に通知すること」としています。

そのため、

  • 紙の「標準報酬月額決定通知書」を交付する
  • 社内システムで通知する
  • 電子データで本人へ交付する

といった方法が考えられます。

【社会保険料の変更に関する通知文の例】

   社会保険料変更に関する通知

貴殿の標準報酬月額および社会保険料の個人負担額が、〇年〇月分(○月支給分)より、下記のとおり変更となります。

   記
① 標準報酬月額
健康保険 ○千円 厚生年金保険 ○千円
② 個人負担分保険料
健康保険料 ○円 厚生年金保険料 ○円
③ 変更の事由 定時決定
               以上

日本年金機構のホームページには、被保険者への通知に利用できるExcel形式の参考様式も掲載されています。会社としては、毎年算定基礎届の結果が届いた後に、従業員へ通知する流れを決めておくとよいでしょう。

■給与明細で社会保険料を知らせるだけでは注意が必要

実務上よくあるのが、「給与明細に健康保険料や厚生年金保険料が載っているので、それで通知したことにならないか」という疑問です。

給与明細に記載されているのは、基本的には給与から実際に控除した社会保険料です。一方、今回求められているのは、標準報酬月額がいくらに決定されたかという通知です。

そのため、「健康保険料 ○○円」「厚生年金保険料 ○○円」という保険料額だけではなく、「標準報酬月額 ○○円」といった決定内容を本人が確認できるようにしておくのが適切です。

また、日本年金機構では、事業主が正当な理由なく通知をしなかった場合には、「6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。」と、罰則の対象となる可能性があることも案内しています。

まとめ

  • 算定基礎届による標準報酬月額の決定は、本人への通知が必要
  • 通知方法は任意だが、明確かつ確実に伝える必要がある
  • 給与明細で保険料額を表示するだけではなく、標準報酬月額の決定内容を通知する

毎年の算定基礎届の業務について、「届出 → 決定通知の確認 → 給与ソフトへの反映 → 従業員への通知」までを一連の作業としてルール化しておくと、漏れを防ぎやすくなります。