今回は「働き方のルール ― 労働基準法のあらまし」(東京労働局・2026年3月)から、 労働基準法の「基本のキ」を抜粋しご紹介します。
実務において重要と考えられる、労基法の全体像を速やかに把握するために有用です。ぜひ、参考にしてください。

1 労働契約 [会社と従業員の関係]

会社や個人事業主が一人でも従業員を雇用すれば、労働基準法に規定する「使用者」となります。使用者は代表取締役や理事長などの経営者だけではなく、この法律に関わる労務管理を任せられている者(支店長、営業所長、人事部長など)も含まれます(法第10条)。

一方、「労働者」とは、正社員、パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員など名称や呼称に関係なく、労働に対して給与が支払われる従業員のことです(法第9条)。

2 労働条件 [労働条件の通知の仕方]

従業員に労働条件を伝えるには、厚生労働省が定める方法によります。
①書面、②ファックス、③電子メールなどのいずれか。

なお、②、③の方法で行う場合、従業員が希望した場合で書面を作成できるものに限られます。

3 就業規則 [就業規則とは]

就業規則とは、従業員が守るべき職場のルールや労働条件の詳細を、労働基準法に基づいて会社が定めたものです。例えば、「労働時間は○時から○時」「賃金は月○万円」「休業の条件」「以下にあてはまる場合、解雇する」などが書かれています。

就業規則は、常時10人以上の従業員を雇用している事業場は必ず作成し、管轄の労働基準監督署に届出をすることが必須です。

4 労働時間の把握と記録 [労働時間って何?]

労働時間とは、従業員が会社の監督・指揮命令下にある時間のことをいいます。従業員が働く時間だけではなく、それに付随する仕事の準備や片付けなどの時間も、労働時間となりえます。
また、実際に作業していない待機時間や仮眠時間といった“手待ち時間”も、会社の監督・指揮命令下にあれば労働時間です。

5 労働時間と休日 [労働時間を理解する]

会社は従業員に1日8時間、1週40時間を超えて勤務させることはできません。ただし、従業員が10人未満の職場(店舗や営業所など)で、商業、映画(製作を除く)、保健衛生業、接客娯楽業の場合は、特例事業場として1週44時間まで勤務させることができます。

1日とは0時から24時までのことをいいますが、一勤務が24時をまたぐ場合には、始業時刻のある日の労働として取り扱います。

6 時間外労働と休日労働 [時間外労働と休日労働]

「時間外労働」とは、1日8時間・1週40時間(特例事業場:44時間)を超える残業のことで、「休日労働」とは、1週1日・4週4日の休日出勤のことです。従業員に残業や休日出勤を行わせるなら、会社と事業場の過半数代表者で協定を結び、管轄の労働基準監督署へ届出をしてください。

この協定は、労働基準法第36条に定められていることから「サブロク協定」と呼ばれています。

7 時間外労働等の上限規制① [時間外労働には上限がある]

働き方改革関連法により罰則付きの上限規制が定められ、際限なく時間外労働を行わせることができなくなりました。さらに特別で臨時的な仕事が発生しても時間外労働は年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、1か月100時間未満(休日労働含む)と、こちらも法律による上限が規制されました。

上限規制に違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。

8 時間外労働等の上限規制② [上限規制の特例付きの業種]

以下の事業又は業務について残業の上限規制の適用が2024(令和6)年4月1日から一部特例付きで開始されました。

[適用除外の業務]
 【新技術・新商品または役務の研究開発業務】ただし、既存の商品やサービスにとどまるものや、商品を専ら製造する業務は含まない。労働安全衛生法の改正により、1週間あたり40時間を超えて労働した時間が1か月100時間を超えた労働者に対しては、医師の面接指導制度の実施が義務付けられた。面接指導を行った医師の意見を勘案し、必要があるときには就業場所や職務内容の変更、有給休暇の付与などの措置を講じなければならない。

9 36協定 [36協定の締結]

労働基準法では労働時間は原則として1日8時間および1週40時間以内で、休日は週1日または4週4休と定められています。
従業員にこの時間を超える残業や休日出勤をさせるためには、会社と事業場の過半数代表者とで「36協定」を締結し、管轄の労働基準監督署へ届出をしてください。

「36協定」を締結しないまま従業員に時間外労働や休日労働をさせた場合は法律違反となります。働き方改革関連法の施行により、協定した上限時間を超えて働かせた場合も同じです。

10 労働時間・変形労働時間制 [変形労働時間制とは]

 「変形労働時間制」とは、季節による繁忙期や閑散期のある業種や、月初や月末など特定週が繁忙になる業種などで採用される、勤務時間の配分などを取り決める制度です。
仕事のムラをなくすことで、全体として労働時間を短縮することが可能です。1か月単位と1年単位の変形労働時間制度があり、2か月や3か月単位も可能です。

11 労働時間・事業場外みなし労働時間制 [事業場外みなし労働時間制とは]

「事業場外みなし労働時間制」(みなし労働時間制)とは、従業員が「会社の外」で仕事をし、かつ、「労働時間を算定することが難しい」場合に、あらかじめ決められた時間を働いたとみなす制度です(法第38条の2)。

「みなし労働時間制」は、会社が1日の労働時間を8時間とみなせば、従業員が9時間外出していても9時間の労働時間とする必要はありません。しかし、逆に従業員が外で6時間しか働かない日があっても、その日は8時間として取り扱う必要があります。

12 労働時間・フレックスタイム制 [フレックスタイム制とは]

「フレックスタイム制」とは、3か月以内の一定期間の総枠時間をあらかじめ決め、その範囲で従業員に始業と終業時刻を自由に決定させるものです。「フレックスタイム制」を導入すると、1日8時間・1週40時間を超えて労働させることができます(法第32条の3)。

13 労働時間・裁量労働制 [裁量労働制とは]

「裁量労働制」とは業務の性質上そのやり方を大幅に従業員の裁量に委ねる必要のある職種において、あらかじめ労使間で定めた時間を労働時間とみなす制度です。適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されており、「専門業務型」と「企画業務型」があります。

14 労働時間・勤務間インターバル制度/高度プロフェッショナル制度

働き方改革では労働時間の短縮と労働条件の改善、多様で柔軟な働き方の実現をめざしています。会社は従業員の会社生活の充実を責務とし、従業員の健康を維持することが求められます。

15 年次有給休暇(年休) [年休は従業員の権利]

年次有給休暇(年休)は、従業員が本来働く日を休んでも、そこは出勤したことにして給与がもらえるという権利です。年休は従業員の都合により、いつ取ってもよいものです(法第39条)。

16 休業 [休業と休職の違い]

「休業」とは、従業員が会社との労働契約を継続したまま休暇を取得すること。育児休業、介護休業などがあります。

「休職」とは、会社がその従業員を働かせることができない理由が生じた場合に、労働契約は維持したまま業務を免除すること。業務外の病気やケガを原因とする傷病休職、病気やケガ以外の事故を理由とする事故欠勤休職などがあります。

なお、従業員が法律に基づく休業を取得したことを理由に、不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。

17 賃金 [賃金支払いの5原則]

「賃金支払いの5原則」は次の5つです。①通貨で、②全額(法令規定の所得税や社会保険料は控除可。労使協定を結ぶことで、法令以外の控除もできる場合あり)を、③毎月1回以上、④一定の期日に、⑤直接労働者に支払う(法第24条)。

18 最低賃金 [最低賃金とは]

最低賃金法に基づき、従業員の生活が成り立つよう、会社が従業員に支払う最低額を国が定めています。最低賃金は「時間額」で定められ、月給制、日給制などすべての給与形態に「時間額」が適用され、パート、アルバイトを含め、すべての従業員に適用されます。

最低賃金は地域によって金額が異なり、また、毎年見直されるため、管轄の労働局のホームページや労働基準監督署で確認してください。

19 平均賃金・賃金台帳 [平均賃金は支払いのモノサシ]

平均賃金は、①解雇予告手当、②休業手当、③年次有給休暇の賃金、④休業補償等の災害補償、⑤減給制裁の制限を計算して決めるときの基準(モノサシ)となるものです(法第12条)。

20 残業代(割増賃金)・その1 [残業代の対象]

残業代の割増率は、①時間帯、②時間数、③時間外や深夜、④法定休日によりそれぞれ変わるので、注意が必要です。

21 残業代(割増賃金)・その2 [固定残業代とは]

固定残業代とは、あらかじめ一定の時間外労働や深夜労働などを想定し、その労働に対する割増賃金を、毎月固定の額で支払うものです。「定額残業代」「みなし残業代」とも呼ばれます。

22 残業代(割増賃金)・その3

[月給制の残業代]
月給制の残業代は、1時間あたりの賃金に換算してから計算します。

[歩合給制の残業代]
歩合給制とは「出来高払い制」「請負給制」ともいい、「売上に対して○%、契約成立1件に対して○円」といった成果に対して定められた金額を支払う賃金制度です。歩合給制であっても法定労働時間を超えて働いた場合は残業代を支払うことになり、1時間あたりの賃金(歩合給÷総労働時間数)をベースに計算します。

[時間帯で時給が異なるときの残業代]
時間ごとに時給が異なる場合は、残業が発生した時間帯で決まっている時給の金額に基づいて割増賃金計算を行います。

23 退 職 [労働契約の終了]

労働契約の終了とは、労働者が何らかの形で会社を辞め、雇用関係が消滅することです。終了の形は大きく分けて、①従業員の都合や労使間での合意に基づく「任意退職」、②契約期間満了や定年などの「自動終了」、③従業員に会社を辞めてもらう「解雇」があります。

24 解雇 [解雇は慎重に]

会社の一方的な意思で従業員との労働契約を終了するのが解雇です。解雇には、①普通解雇、②整理解雇、③懲戒解雇、があります。3つの解雇とも実行するには満たすべき要件があるので、慎重に行ってください。

25 解雇予告手当と休業手当 [解雇の手続き]

会社が従業員を解雇する際、30日以上前に解雇を予告する必要があります。解雇予告をせずに即時に解雇する場合は、解雇と同時に30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。例えば、解雇日の20日前に解雇予告した場合は、10日分の解雇予告手当の支払いが必要です。

26 健康管理 [健康診断で従業員の健康を確保]

従業員を新たに雇い入れる時や継続して雇い続けるためには、1年以内ごとに1回、健康診断を受ける必要があります。なお、特定業務従事者(深夜労働をする従業員など)は6か月以内ごとに1回の健康診断が必要です。

27 安全、衛生管理体制 [安全で衛生的な職場にしよう]

従業員の健康管理や労働災害を防止するため、会社は労働安全衛生法により、職場の危険の排除や、疾病の予防処置などを担当する者を選任する必要があります。

28 労働災害 [労働災害が発生したら速やかに報告を!]

従業員が仕事中にケガをしたり、仕事が原因で病気になったりすることを「労働災害」といいます。万が一、職場で労働災害が発生したら、救護のうえ、所定の方法で管轄の労働基準監督署に報告してください。