【ご質問】

先日、「定年退職日の翌日から再雇用した場合、年次有給休暇の基準日(付与される日)は再雇用日から6か月後に設定してよいか」というご質問をいただきました。


【回 答】

このご質問は、中小企業で多くが誤解されている取扱いです。
結論から申し上げると、これは認められません。定年前からの基準日・勤続年数を引き継いで管理する必要があります。


定年再雇用は継続勤務にあたる

労働基準法第39条では、年次有給休暇は「雇入れの日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤」した場合に付与されます。

ここでポイントとなるのが「継続勤務」の解釈です。
厚生労働省の行政解釈(基発150号)によれば、定年退職者を引き続き嘱託社員などとして同一事業場で使用する場合は、「単なる身分の切替え」とみなされます。
つまり、実質的に労働関係は継続していると判断されるため、勤続年数を通算しなければなりません。

その結果、再雇用日を「新たな雇入れ日」として扱い、そこから6か月後に初回付与するという運用はできないこととなります。


実務上の対応例

定年前から在籍していた従業員については、定年前の有給休暇の基準日をそのまま継続し、基準日時点の通算勤続年数に応じた日数を付与します。

【具体例】

  • 入社日:2000年4月1日
  • 有休の基準日:毎年4月1日
  • 定年退職日:2026年3月31日
  • 再雇用開始日:2026年4月1日

この場合、2026年4月1日の基準日には、通算26年勤務として法定の20日を付与する必要があります。
「再雇用開始から6か月後の10月1日を初回基準日とする」という処理は認められません。


定年前の有休残日数の扱い

あわせて重要な点として、定年前に付与されて残っている有給休暇はリセットされません。
付与から2年の時効が来るまで、再雇用後も引き続き使用できます。
再雇用後は「定年前からの繰越残日数」と「基準日ごとの新規付与分」を合算して管理する必要があります。


再雇用後に労働条件が変わる場合

再雇用にあたって所定労働日数や労働時間が短くなるケースも多くあります。
週の所定労働日数が4日以下、かつ週所定労働時間が30時間未満となる場合は、比例付与の対象です。
この場合も、勤続年数は定年前から通算した年数を使って付与日数(比例付与)を算出します。


まとめ

定年後に間隔なく再雇用した場合の年次有給休暇の取扱いは、次の3点が基本となります。

  • 勤続年数は定年前から通算する
  • 基準日は定年前のものを継続使用する
  • 定年前の有休残日数はリセットせず繰り越す

「再雇用だから新たにカウントし直せる」と誤解されているケースは少なくありません。
誤った運用が続くと労働基準法違反となるリスクもありますので、制度設計や管理方法について不安のある場合は、ご相談ください。