Q 「2か月の試用期間中は、社会保険に入れなくても大丈夫ですよね?」というご相談をいただきました。

A 結論からいうと、法人の事業所で従業員を1人でも雇い(役員のみの場合も該当)、報酬(賃金)を支払っている場合、その事業所は原則として健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となります。そして、要件に当てはまる従業員は、試用期間中か本採用後かに関係なく加入が必要です。

ここでは「試用期間2か月の新規採用者」「特定適用事業所ではない(=従業員51人以下の一般法人)」という前提で、説明します。


1.健康保険・厚生年金保険(社会保険)は「雇用見込み」と「4分の3基準」がカギ

まず大事なのは、試用期間でも“雇用が続く見込みがあるか”です。

試用期間でも「2か月を超え継続雇用の予定」なら入社日から加入

  • 正社員として採用し、試用期間終了後も雇用を続ける予定
    → 原則として「当初から2か月を超えて雇用する前提」と扱われ、入社日(雇入れ日)から社会保険加入が必要です。
  • 例外として、「2か月だけの有期契約で更新なし」など、臨時・短期雇用の場合は別途検討になります。
  • 2か月以内の期間を定めて雇用される場合、社会保険の適用除外とされていますが、令和4年10月以降は、当初の雇用期間が2か月以内であっても、以下のいずれかに該当する場合は雇用期間の当初から社会保険の加入となります。

    ア  就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されて いる場合

    イ  同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合

特定適用事業所ではない場合は「4分の3基準」で判断

いわゆる短時間労働者の特例(週20時間以上・月額8.8万円以上等)は、ここでは前提に入りません。
そのため、加入の判断は原則として次の基準です。

  • 週の所定労働時間が、通常の社員の4分の3以上
  • 月の所定労働日数が、通常の社員の4分の3以上

例)通常の正社員:週40時間・月21日
→ 4分の3基準:週30時間以上 かつ 月16日以上

この働き方で雇い入れるなら、試用期間中でも入社日から加入義務が生じます。

実務の注意点

  • 判断は原則「雇用契約書等の所定労働時間・日数」ですが、実態が大幅に上回る状態が続く場合は、実態に合わせて見直しが必要です。
  • 本人が「試用期間中は入りたくない」と希望しても、強制適用のため要件を満たす限り事業主は加入手続きが必要です。

2.雇用保険は「週20時間以上」+「31日以上の見込み」で入社日加入が基本

雇用保険は、呼び方(正社員・パート・アルバイト)や本人の希望ではなく、次の2つで判断します。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上継続して雇用される見込みがある

試用期間2か月で、その後本採用予定の一般的なケースなら、週20時間以上で働く予定であれば、通常は「31日以上の見込みあり」と判断されます。
そのため、入社日から雇用保険の資格取得手続きが必要です。

適用除外の確認も忘れずに

  • 昼間学生(例外あり)
    ただし、以下の①〜④のいずれかに該当する場合は被保険者となります。
    ①卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一事業所に勤務する予定の者
    ②休学中の者
    ③事業主の命により、または事業主の承認を受け(雇用関係を存続したまま)大学院等に在学する者
    ④一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する者であって、同種の業務に従事している他の従業員と同様に勤務することができると認められる者
  • 事業主と同居の親族などは、要件を満たしていなければ適用除外に

3.労災保険は雇ったときから全員が対象

労災保険は、

  • 試用期間か本採用か
  • 有期か無期か
  • 労働時間の長短
  • 従業員規模

これらに関係なく、賃金を支払って使用する労働者は原則すべて対象です。

また労災保険は、社会保険や雇用保険のように個々人ごとの「加入手続き」をする仕組みではなく、事業所として保険関係が成立し保険料を納付する形です。
したがって、仮に試用期間のみの短期雇用であっても、業務中・通勤中の災害があれば労災保険による補償対象になります。


まとめ:試用期間3か月の新規採用でも入社日から原則加入

健康保険・厚生年金保険(社会保険)
  • 法人で従業員を使用していれば原則「強制適用事業所」
  • 継続雇用の見込みがあり、4分の3基準を満たすなら入社日から加入
雇用保険
  • 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば入社日から加入
  • 試用期間付きの正社員採用は多くの場合ここに該当します
労災保険
  • 労働者を雇った時点で原則全員が対象、試用期間のみでも補償対象になります

採用手続きにおいて、「この働き方は加入が必要?」と迷ったら、雇用契約書の内容と実態に相違ないかを、まず確認してください。
それでも判断に迷うようであれば、社会保険労務士に相談しましょう。