Q.自然災害が発生したとき、企業はどのような労務管理上の対応が必要ですか?
A.事前の防災対策・事業継続計画(BCP)の整備に加え、休業手当や非常時払い、時間外労働の取扱い、労災保険、社会保険料の納付猶予など、多岐にわたる対応が求められます。
■事前の備えを万全に
企業の防災の取り組みには、①防災対策と②事業継続の2つの柱があります。
①防災対策は、事業所の耐震化やオフィス家具の転倒防止、備蓄、避難経路、安否確認など、主に「ヒト・モノ」を守る行動を指します。平時からチェックシートなどを用いて、適切な対策が行えているか確認しておくことが重要です。
②事業継続では、災害などの不測の事態が発生しても重要業務を中断させない(または早期復旧させる)ための行動計画、すなわち「BCP(事業継続計画)」を策定します。基本方針の明確化や想定リスクの整理に加え、重要業務の選定、目標復旧時間の設定、必要リソースの確保という3点を明確にしていく必要があります。BCPの策定は、企業価値の向上にも寄与します。
■災害時に生じる労務管理上の留意点
①休業手当
企業の判断で休業する場合、その休業が「不可抗力」と認められるかにより、休業手当の支払義務の有無が左右されます。地震や台風などで事業所が直接被害を受けて操業できない場合は、支払義務が生じない可能性があります。一方、従業員本人の判断による欠勤は、原則としてノーワーク・ノーペイの考え方が適用されます。
②非常時払い
労働基準法第25条により、従業員から請求があった場合、企業は支払期日前であってもすでに働いた分の給与を支払わなければなりません。地震・台風・洪水などの災害はこの対象に該当し、請求を受けたときは遅滞なく対応する必要があります。
③時間外・休日労働の例外
災害直後も、原則として36協定の範囲内で労働時間を管理します。ただし、労働基準監督署長の許可を受けた場合にかぎり、臨時に上限を超えて労働させることが認められるケースがあります。事態急迫時は、事後の届出でも差し支えありません。
④労災保険(業務災害・通勤災害)
自然災害による被災であっても、業務との相当因果関係が認められなければ業務災害には該当しません。ただし、被害を受けやすい特別な環境がある場合は認定されることもあります。通勤災害についても、通常の経路・方法による通勤中であれば該当する可能性がありますが、企業の指示に反して出勤した場合は対象外となることがあります。
⑤社会保険料・労働保険料の納付猶予
災害により納付が困難となった場合、企業からの申請により納付猶予を受けられる制度があります。詳細な要件は日本年金機構や厚生労働省のサイトで確認できます。
■まとめ
- 自然災害に備え、防災対策とBCPの両面から事前準備を整えておくことが重要である
- 休業手当や非常時払いなど、災害時特有の労務対応には正しい理解が求められる
- 実際の判断は状況によって異なるため、社会保険労務士や労働基準監督署への確認を
