Q. 育児休業から復帰した従業員が時短勤務になり、給与が下がりました。社会保険料はどうなりますか?
A. このようなケースでは「育児休業等終了時報酬月額変更(終了時改定)」という制度を利用できる可能性があります。通常の随時改定や定時決定を待たずに、標準報酬月額を実態に合わせて引き下げる(あるいは引き上げる)ことができる特例です。
■制度の目的と対象となるケース
育児休業から復職した際、短時間勤務の開始や残業抑制などで報酬が下がった場合に、通常の随時改定(月額変更)や毎年1回の定時決定(算定基礎)を待たずに標準報酬月額を引き下げることを可能にする特例制度です。男女とも利用できます。
例えば、次のような復職パターンが検討対象になります。
- 復職と同時に育児短時間勤務を開始し、基本給が減額された
- 復職後、残業禁止・残業抑制となり、時間外手当が大きく減った
- 育児休業が1か月未満・産後パパ育休のみでも、復職後に報酬が下がった
一方で、育児休業を取らずに短時間勤務に入ったケースや、育児休業終了からかなり時間を置いて短時間勤務に切り替えたケースは、この制度ではなく通常の随時改定の検討対象となりますので、区別が必要です。
■対象となる要件
終了時改定は、次の要件をすべて満たした場合に、従業員本人の申出に基づいて手続きが可能です。
- 子が3歳未満であること
- 改定前後の標準報酬月額に1等級以上の差があること
- 育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうち、支払基礎日数が原則17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)の月が1か月以上あること
- パート等で3か月すべて17日未満の場合は、15・16日の月のみで平均を取る特例があること
- 従業員本人からの申出があること
■算定方法と適用時期
復職日が属する支給月を起点に、支給月ベースで連続する3か月の報酬を平均し、保険料額表に当てはめて改定後の標準報酬月額を算出します。
改定後の標準報酬月額は、育児休業終了日の翌日が属する月の4か月目から適用されます。すなわち、10月に復職した場合、翌年1月分の保険料から反映される計算です。
なお、7~9月に定時決定と時期が重なる場合は、育児休業等終了時の月額変更が優先して適用されます。終了時改定を行わない、または要件に該当しない場合は、報酬変動の有無に応じて通常の随時改定(月額変更)の検討を行うことになります。
■手続きと注意点
届出は「育児休業等終了時報酬月額変更届」を事務センターまたは管轄年金事務所に提出します。
法定期限はありませんが、3か月分の賃金が確定次第、速やかな届出が望まれます。この届出は、従業員本人からの申出があって初めて行えるものであり、事業主が一方的に届出を行うことはできません。
また、標準報酬月額の低下は将来の年金額にも影響するため、「養育期間標準報酬月額特例」もあわせて案内することが重要です。この特例を利用すれば、年金計算上は育児前の標準報酬月額のままとみなされます。
まとめ
- 育休復帰後の時短勤務等による報酬減は、通常の随時改定ではなく終了時改定で対応するケースがある
- 支払基礎日数の要件を満たす月があるか、要件を丁寧に確認する必要がある
- 改定後の標準報酬月額は復職月の4か月目から適用され、定時決定と重なる場合は終了時改定が優先される
- 保険料低下と年金額への影響を説明し、養育期間特例もあわせて案内する
