「腰痛はよくある症状だから、労災にはなりにくいのでは」と思われることがあります。
しかし、仕事が原因で発症した腰痛は、一定の要件を満たせば労災認定の対象になります。
今回は「腰痛の場合の労災認定について教えてください」というご質問をいただきました。
厚生労働省の認定基準では、腰痛の労災は大きく2つに分かれます。
一つは、突発的な事故や急な力の作用によって起こる「災害性の原因による腰痛」です。
たとえば、重量物を運搬中に転倒した場合や、予想外に重い物を持ち上げた際に腰を痛めた場合、不自然な姿勢で急に強い負担がかかった場合などがこれにあたります。
一方で、一般的ないわゆる「ぎっくり腰」は、日常生活でも起こりうるため、仕事中に生じたからといって直ちに労災とは限りません。
ただし、異常な動作や姿勢によって強い力が加わったことが明確であれば、認定される可能性があります。
もう一つは、「災害性の原因によらない腰痛」です。
これは、日々の業務による腰への負担が積み重なって発症するものです。
たとえば、約20kg以上の重量物を繰り返し中腰で扱う業務、長時間同じ姿勢を続ける業務、腰に強い振動を受ける業務などに、おおむね3か月以上従事している場合が対象になりえます。
また、こうした負担の大きい業務に約10年以上従事し、通常の加齢変化を明らかに超える骨の変化が認められる場合には、労災と判断されることもあります。
なお、椎間板ヘルニアなどの既往症がある場合でも、業務によって再発したり著しく悪化したりしたときは、一定範囲で補償の対象になることがあります。
実際の事例として、倉庫内でつまずいて荷物をかばい、腰をひねって負傷した事例や、港湾荷役作業で重量物を中腰姿勢で繰り返し扱った結果、腰痛を発症した事例などで、労災認定がされています。
腰痛の労災認定では、「仕事が原因だったかどうか」が重要なポイントです。
事故による腰痛だけでなく、日々の業務負担の積み重ねが原因となる場合もあります。
自社の業務内容に照らして、該当の可能性がないか一度確認してみてはいかがでしょうか。
確認には、社内のヒヤリハット事例の収集や、他社の災害事例を参考に自社にその災害を当てはめるとどうなのかを確認していくことで、自社にない広い視野での確認ができ、腰痛予防だけではなく、他の労災対策につながると思います。
