Q.日割計算の方法にはどのようなものがありますか?
A.主な方法は「当月所定労働日数(時間)割」「月平均所定労働日数(時間)割」「暦日数割」の3つです。それぞれ使いどころが異なるため、就業規則や賃金規程で明確に定めておくことが重要です。
■その月の所定労働時間・所定労働日数で割る方法
例:月給 ÷ 当月の所定労働日数 × 出勤日数 または 月給 ÷ 当月の所定労働時間 × 実労働時間
実務では、途中入社・途中退職・欠勤控除に広く用いられている方法です。
その月に本来働くべき日数・時間を基準にするため、「働くべき日のうち何日・何時間働いたか」が明確になります。
注意点は、月によって単価が変わることです。
たとえば2月や祝日が多い月は所定労働日数が少ないため、1日単価が高くなります。
反対に所定労働日数が多い月は1日単価が低くなります。
また、1日の所定労働時間が全員同じなら「日数割」でもよいですが、シフト制、短時間勤務者、変形労働時間制などで日ごとの労働時間が異なる場合は、日数割より時間割の方が法令上も整合的であり、安全といえます。
日数で割ると、4時間勤務の日も8時間勤務の日も同じ1日として扱われ、不公平感や未払い賃金の指摘につながるおそれがあるためです。
■年間の月平均所定労働時間・月平均所定労働日数で割る方法
例:月給 ÷ 1か月平均所定労働日数 × 出勤日数 または 月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 × 実労働時間
年間所定労働日数が240日、1日8時間なら、240日 × 8時間 ÷ 12か月 = 月平均160時間という考え方です。
この方法のメリットは、月によって単価が変わらないことです。
給与計算上の単価が安定するため、欠勤控除、遅刻早退控除、休職控除などを統一的に処理しやすくなります。
特に重要なのは、割増賃金の基礎単価や最低賃金額との比較では、月平均所定労働時間を用いることが多いという点です。
厚生労働省の通達・リーフレットでも、月給制の割増賃金計算においては「月給額 ÷ 1年間における1か月平均所定労働時間数」により1時間当たり賃金額を算出する方法が示されています。
最低賃金の確認でも、月給制については「月給 ÷ 1か月平均所定労働時間」で時間額に換算して比較する方法が用いられています。
ただし、日割支給にこの方法を使う場合は注意が必要です。
たとえば平均所定労働日数が20日なのに、その月の実際の所定労働日数が23日ある場合、
月給 ÷ 20日 × 23日とすると、計算上の金額が満額の月給を超えてしまうことがあります。
そのため実務では、就業規則や賃金規程で次のように整理しておく方法が考えられます。
途中入社・途中退職の月における日割支給額は、月額給与を上限とする。
欠勤控除は、月額給与から控除する方式で行う。
つまり、支給方式なのか、控除方式なのか、計算上満額を超える場合をどう取り扱うのかまで、あらかじめ定めておくことが重要です。
■暦日数で割る方法
例:月給 ÷ その月の暦日数 × 在籍日数
例:3月なら31日、4月なら30日、2月なら28日または29日で割ります。
この方法は、途中入社・途中退職・休職開始・休職終了など、「在籍期間」を基準に按分したい場合に用いられます。
休日も含めて1か月分の月給と考えるため、日給月給というより「在籍日数按分」に近い考え方です。
メリットはわかりやすいことです。
入社日から月末まで何日あるか、退職日まで何日あるかで計算できます。
一方で、欠勤控除にはあまり適しません。
たとえば1日欠勤した場合に、月給を31日で割った額だけ控除すると、実際の1労働日分より控除額が小さくなり、欠勤控除として不十分となる場合があります。
所定労働日数が20日の月であれば、本来の1労働日価値は「月給 ÷ 20日」に近いからです。
また、同じ10日間在籍でも、2月と3月で単価が変わります。
2月は「28日分の10日」、3月は「31日分の10日」となるため、月によって支給額に差が出ます。
■実務上の使い分けの一例
一般的には、次のような使い分けとする会社が多くみられます。
| 状況 | 使用されることが多い方法 |
|---|---|
| 途中入社・途中退職 | 当月所定労働日数割、または暦日割 |
| 欠勤控除・遅刻早退控除 | 当月所定労働時間割、または月平均所定労働時間割 |
| 残業代単価 | (月給制・月額の場合)月平均所定労働時間割(原則) |
| 最低賃金確認 | (月給制・月額の場合)月平均所定労働時間割(必須) |
| 休職・復職の月 | 当月所定労働日数割、または暦日割 |
なお、既存の計算方法を変更して従業員に不利益が生じる場合は、単に賃金規程を変更するだけでは足りず、労働契約法上、原則として本人の同意が必要とされます。
就業規則変更による場合も、その周知性と内容の合理性が問題となりますので注意が必要です。
■就業規則・賃金規程に記載しておくべきポイント
一番避けたいのは、月によって、あるいは担当者によって日割・時間割の計算方法が変わってしまうことです。
賃金規程等には、少なくとも以下の要素を明文化しておくと、給与計算を担当する方が代わっても運用をそろえやすくなります。
- 対象賃金:基本給のみか、諸手当(職務手当等)を含めるか
- 分母:当月所定労働日数・当月所定労働時間・月平均所定労働時間・暦日数のいずれか
- 分子:出勤日数・実労働時間・在籍日数など、何を基準とするか
- 端数処理:1円未満、1時間未満の端数処理方法(四捨五入・切り捨て等)
- 満額(月給)を超える場合の扱い:途中入社・途中退職時などの上限設定の有無
これらをあらかじめ規定しておくことで、給与計算のトラブルをかなり防ぐことができます。
【まとめ】
- 日割計算の方法は「当月所定割」「月平均割」「暦日割」の3種類があり、用途に応じた使い分けが重要
- 割増賃金の単価計算や最低賃金との比較には、月平均所定労働時間を用いる方法が法令上の基準となっている
- 計算方法は就業規則・賃金規程に「対象賃金・分母・分子・端数処理・満額を超えた場合の扱い」まで明文化しておくことで、給与計算トラブルを防ぐことができる
