1 建設業の労災保険は「現場だけ」では足りないことが
建設業では、元請工事ごとに労災保険が成立する「有期事業」という考え方があります。
そのため、「建設工事の労災保険に入っているから大丈夫」と考えがちです。
ですが、従業員が行う作業の中には、特定の工事現場に直接付随しない業務があります。
この場合、工事現場の労災保険ではなく、事務所等の労災保険、つまり「継続事業」として別に保険関係を成立させる必要があることがあります。
事務職員を雇用していない場合でも、建設業務に従事する従業員が工事現場以外の業務を行う見込みがあれば注意が必要です。
2 どのような作業が対象になるのか
対象になりやすいのは、元請工事に直接関連しない社内作業や、特定の工事現場に付随しない業務です。
たとえば、土場や資材置き場での整理整頓、型枠・重機・電動工具などの清掃やメンテナンス、自社倉庫の整理作業などが考えられます。
また、見積書作成のために取引先へ現場状況を確認しに行く場合や、事業として行うものではない防災対策、災害復旧、除雪作業、自社施設の修繕作業なども該当する場合があります。
ポイントは、その作業が「どこで行われたか」だけではなく、「特定の工事現場に付随するものかどうか」です。
現場作業に見える内容でも、自社施設の修繕のように工期を定めず、通常業務の合間に行う場合などは、有期事業ではなく事務所等労災の対象となることがあります。
3 年度更新の際の申告方法に注意
事務所等労災の保険料を計算する際は、特定の工事現場に付随しない業務に従事した部分の賃金額を算出し、算定基礎に含めます。
出勤簿や出面などの記録があれば、それをもとに日数や時間を確認します。記録がない場合でも、実態から作業日数や時間数を推算して賃金額を計算する必要があります。
年度更新では、元請として行った工事に関する労災、工事現場に付随しない業務に関する事務所等労災、そして雇用保険をそれぞれ適正に申告することが大切です。
また、下請の従業員が元請工事に関連した業務で負傷した場合は、元請事業の保険関係で労災請求するのが原則です。
反対に、工事現場に付随しない業務で負傷した場合は、事務所等労災で請求することになります。
未手続のまま事故が起きると、給付費用の全部または一部を徴収されることもあるため、早めの確認が必要です。
まとめ
- 現場以外の作業を洗い出す
資材置き場の整理、自社倉庫の修繕、見積りのための確認作業などがないか確認しましょう。 - 作業時間や日数を記録する
事務所等労災の保険料計算に備え、出勤簿や作業記録を残しておきましょう。 - 年度更新前に区分を確認する
元請工事の労災、事務所等労災、雇用保険を分けて、正しく申告できる体制を整えましょう。 - 参考資料
建設業の事業主の皆さまへ
