2025年6月3日(月)から、労働保険の年度更新申告の受付が開始されています。
申告・納付の期限は、2025年7月10日(木)です。
年度更新とは、毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の確定保険料と今年度の概算保険料を申告・納付する定例の手続きです。
労災保険と雇用保険を合わせた「労働保険」の手続きであり、従業員を一人でも雇用している事業主すべてが対象となります。
期限までに納付ができず滞納の状態になると、延滞金などが発生することがあるため、計画的な手続きをおすすめします。
本記事では、年度更新の基本的な仕組みとともに、2025年度の変更点や実務上の注意点を、わかりやすく解説いたします。
1.年度更の基本と変更点(2025年度)
まずは年度更新の概要と、今年度の主な変更点を確認しましょう。
年度更新の流れ
- 前年度(2024年4月1日~2025年3月31日)の確定保険料を精算
- 今年度(2025年4月1日~2026年3月31日)の概算保険料を申告・納付
この2つを同時に行います。
主な変更点
- 雇用保険料率が引き下げられました。(業種別詳細は厚労省HPをご確認ください)
- 労災保険率は2024年に改定され、2025年度は前年と同じ率が適用されます。
- 特定フリーランス事業が特別加入対象に追加され、区分番号に変更があります。
- 年度更新申告書の様式は昨年と同様ですが、雇用保険料率の変更により、計算内容の確認が必要です。
2.対象者と賃金集計のチェックポイント
労働保険料を正しく計算するには、「誰の、どの賃金を対象にするのか」を丁寧に確認する必要があります。
労災保険の対象者
- 労働の対価として賃金を受け取るアルバイト、パート等の名称や雇用形態にかかわらずすべての従業員
- 役員や同居の親族、事業主本人は対象外
雇用保険の対象者
- 週所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間31日以上の見込み
- 65歳以上のマルチジョブホルダーも対象
- 兼務役員でも、届出済で労働者性が認められる場合は対象
賃金集計の範囲
【集計に含める主な賃金】
- 基本給
- 各種手当(通勤費、役職手当など)
- 残業代
- 賞与
- 通勤手当など
【集計に含めない主な賃金(費用)】
- 出張旅費(実費)
- 慶弔見舞金
- 解雇予告手当
- 退職金
- 休業補償など
3.実務上の注意点とおすすめの対応
登録情報の確認
年度更新の申告書には、労働保険番号や保険料率、口座振替や電子申請の有無など、事業所に関する重要な情報が記載されています。
記載内容に誤りがないか、事前に確認しておきましょう。
年度更新申告書計算支援ツールの活用
年度更新申告書計算支援ツールとは、厚生労働省が提供するExcel(エクセル)形式の無料ツール。
事業主が毎年行う「労働保険の年度更新申告書」の作成をサポートするものです。
- Excel(ファイル)形式であるため、ほぼどのパソコンにも対応しており使いやすい。
- 自動計算機能により申告書記入イメージが作成できます。
口座振替の活用
- 手数料なしで納付の手間が軽減されます。
- 納付日も約2ヶ月の猶予があり、計画的な資金繰りに役立ちます。
よくあるご質問(Q\&A)
Q.確定賃金の賃金額とは、総支給額でしょうか? 通勤手当を除いた額でしょうか?
A.通勤手当を含む「総支給額」で申告します。
Q.役員は対象になりますか?
A.兼務役員で届出をしている場合は対象になります。
Q.同居の親族は労災保険の対象ですか?
A.原則として同居の親族は対象外です。
労働者性が認められる場合は、対象になることもあります。
まとめ
年度更新は、毎年必ず行う重要な手続きです。
賃金集計や被保険者の確認を丁寧に行い、今年度の保険料率にも注意を払って申告しましょう。
特に2025年度は、雇用保険料率の変更や特別加入対象の拡大といったポイントがあります。
電子申請や口座振替をうまく活用することで、手続きをスムーズに行うことができます。
当事務所では、年度更新に関するご相談や手続きの代行も承っております。
お気軽にお問い合わせください。
※参考:厚生労働省『令和7年度 雇用保険料率・労災保険率等』、『年度更新マニュアル』等