「労災かくし」と聞くと、わざと悪質に隠すケースだけを思い浮かべるかもしれません。

実際には、

「会社で治療費を払っておこう」
「とりあえず健康保険で受診してもらおう」

といった対応が、結果として労災かくしと見られてしまうことがあります。

労災かくしとは、業務中や通勤中のけが・病気であるにもかかわらず、労災として適正な報告や届出をしないことをいいます。
たとえば、労働者死傷病報告を出さないといった対応が典型例であり、事実と違う内容で報告する、健康保険を使って受診させることを指示することも「労災かくし」となることがあります。

「労災かくし」をしてしまう(結果としてしてしまう)原因には様々なケースがありますが、労災は本来、会社の判断だけで独善的に処理してよいものではありません。
事故の内容を正しく把握し、必要な手続を行うことが前提です。

特に注意したいのは、現場の管理者や担当者が「これくらいなら治療を受けなくてもよいだろう」と判断してしまうこと。
小さなケガに見えても、後から症状が重くなることはありますので、念のため病院で治療を受けておいたほうがよいでしょう。

労災対応は、会社側の「起きてしまった」から「起こしてしまった」という意識に変えること、また労災申請を単なる事務手続で終わらせず、事故の把握、原因の確認、再発防止まで含めた会社の安全管理の問題として捉える姿勢が大切です。

次回は、労災かくしは、なぜ発覚するのか、企業が労災を隠したつもりでも、「労災かくし」は見つかってしまう理由を整理します。

【参考】

労働安全衛生法 第100条(報告等)
第3項 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

労働安全衛生規則 第97条(労働者死傷病報告)
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒(以下「労働災害等」という。)により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

休業4日未満の場合: 四半期ごとにまとめて報告(例:1~3月分を4月末日まで)
休業4日以上または死亡の場合: 遅滞なく(事故発生後すみやかに)報告

労働安全衛生法 第120条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
第5号 第100条第1項又は第3項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者