第6章 雇用した人と一緒に働くために大切なこと
「採用が決まって、無事に初出勤も終わった」
ここまで来たあなた、本当にお疲れさまでした。
でも、ここからが本当のスタートです。
人を雇うというのは、「一緒に働く」ということ。
つまり、日々のコミュニケーションや信頼関係づくりが、これからの仕事の質を大きく左右します。
この章では、雇った人と気持ちよく、長く一緒に働いていくために大切なことを、実践的にお伝えしていきます。
1 「教える」より「伝える」ことを意識しよう
人を雇ったばかりのとき、よくある悩みが「どう教えたらいいか分からない」というもの。
でも、最初から完璧に教えようとしなくて大丈夫です。
大切なのは、「何を、なぜ、どうしてやっているのか」を、あなたの言葉で伝えること。
たとえば…
- 「この作業は、こういう理由で大事なんです」
- 「お客様にこう思ってもらえるように、こうしてるんです」
というように、単なる手順だけでなく、「背景」や「想い」も一緒に伝えることで、相手の理解度がぐっと深まります。
「やり方」だけでなく「考え方」を伝えると、自分で判断できる人に育ちます。
2 こまめな声かけが、信頼をつくる
「何かあったら言ってね」と伝えても、相手はなかなか言い出せないものです。
特に、雇われたばかりの人は、遠慮や不安でいっぱいです。
だからこそ、こちらからこまめに声をかけることが大切です。
- 「困ってることない?」
- 「やりにくいところあったら教えてね」
- 「ありがとう、助かってるよ」
たった一言でも、相手の安心感は大きく変わります。
信頼関係は、日々の小さなやりとりの積み重ねで育っていくのです。
「1日1回、感謝を伝える」「1日のうちに仕事以外の雑談を入れよう」
と決めておくと、自然と関係が深まります。
3 仕事の「見える化」で、迷いを減らす
「何を、どこまで、どうやってやればいいのか分からない」
これは、新しく入った人が感じやすい不安です。
その不安を減らすには、仕事の「見える化」が効果的です。
たとえば…
- 業務マニュアル(簡単なメモでもOK)
- 1日の流れをホワイトボードに書く
- チェックリストを用意する
- 共有フォルダに資料をまとめておく
- 新しい人から受けた質問は社内FAQにまとめる
こうした工夫があるだけで、「自分で確認できる」「迷ったときに戻れる」安心感が生まれます。
「指導者がいなくても回る仕組み」を普段から少しずつ整えていくことが、次の成長につながります。
4 「できていないこと」より「できていること」に目を向ける
人を育てるとき、つい「できていないところ」に目がいきがちです。
でも、最初は誰でも不慣れで当たり前。
それよりも、「できていること」「頑張っていること」に目を向けて、しっかり言葉にして伝えることが大切です。
- 「昨日よりスムーズにできてたね」
- 「その対応、すごく丁寧だったよ」
- 「自分で考えて動いてくれて助かった」
こうした言葉が、相手の自信とやる気を育てます。
「できていないこと」は、責めるのではなく「一緒に改善する」スタンスで接すると、信頼関係が増します。
5「合わないかも…」と思ったときの向き合い方
どんなに準備しても、「あれ?ちょっと違うかも…」と感じることはあります。
でも、すぐに「失敗だった」と決めつけるのは早すぎます。
まずは、以下のことを確認してみましょう。
- こちらの伝え方に問題はなかったか?
- 相手が不安や遠慮で本音を言えていないだけでは?
- 仕事の内容や量が合っていないのでは?
そして、率直に話し合う時間をつくってみてください。
「どうしたらもっと働きやすくなるか」を一緒に考えることで、関係が変わることもあります。
「合わない」ではなく「まだ分かり合えていないだけかも」と考えてみましょう。
6 「一緒に働く」って、どういうこと?
人を雇うというのは、「上司と部下」になることではありません。
むしろ、「チームになる」こと。
- お互いに助け合う
- それぞれの得意を活かす
- 一緒に成長していく
そんな関係を築けたとき、仕事はもっと楽しく、成果も出やすくなります。
あなたが「一緒に働けてうれしい」と思えるように、相手にも「ここで働けてよかった」と思ってもらえるように。
そのためにできることを、少しずつ積み重ねていきましょう。
「雇った人」ではなく「仲間」として接することで、関係性が変わります。
✅ この章のポイント(おさらい)
- 「やり方」だけでなく「考え方」を伝える
- こまめな声かけで信頼関係を築く
- 仕事の「見える化」で不安を減らす
- 「できていること」に目を向けて、言葉にする
- 「合わないかも」と思ったら、まずは話し合う
- 「仲間」として接することで、関係が深まる
《まとめ》
人を育てるのではなく、「一緒に育つ」
人を雇う本質というのは「儲けるための手段」でも「管理すること」でもありません。
それは、「一緒に育っていくこと」。
そして、「一緒に職場を作っていくこと」です。
私も前職の人材派遣会社においてはクライアントにマッチングできるよう努力していました。
ですが、実際に自分が人を雇い、育成していくとなると状況は勝手が違ってきます。
「自分以上に相手は成長しない」
これは開業間もない頃に、クライアントから教わった言葉です。
相手に何かを求めると、それは自分にも返ってきます。
自分が相手以上に成長しようとしていないと、相手も動いてはくれません。
人材育成の要諦です。