Q.育児短時間勤務中の従業員に残業を命じることはできますか?
A.残業免除の申出がない段階では可能ですが、従業員が育児に係る所定外労働の制限(残業免除)を請求した後は、原則として残業を命じることはできません。
■申出前であれば残業命令は可能
たとえば、通常勤務が9時~18時、短時間勤務が9時~16時の場合、16時以降の勤務はその従業員にとって所定外労働です。
ただし、次の前提を満たしていれば、会社が16時以降の勤務を命じる余地はあります。
- 残業命令の根拠が就業規則・雇用契約にあること
- 法定時間外労働になる場合は36協定が締結・届出されていること
- 業務上の必要性があること
- 育児・介護への配慮を欠く濫用的な命令でないこと
育児の短時間勤務制度は、3歳未満の子を養育する労働者について、原則1日6時間とする措置を含む制度を会社が設ける義務があります(育児・介護休業法第23条)。
■残業免除の申出後は原則として残業不可
従業員が所定外労働の制限、いわゆる残業免除を請求した場合、会社は原則として、その従業員を所定労働時間を超えて働かせることができません。(ここでいう「働かせることができない」は、会社として残業を命じることができない、という趣旨です。)
育児の場合、2025年4月1日から対象が拡大され、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求できます。
一定の要件を満たす労働者が対象となり、請求があると、会社はその労働者について所定外労働を免除しなければなりません。
(育児・介護休業法第16条の8、第16条の9 等)
介護の場合も、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求したときは、原則として所定外労働をさせることはできません。
対象家族には、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母などが含まれます。
(育児・介護休業法第16条の11 等)
したがって、短時間勤務が9時~16時であれば、残業免除期間中は16時を超える勤務命令は原則不可です。
たとえ16時~18時が法定労働時間内であっても、「その従業員の所定労働時間」を超えるためです。
■「時間外労働の制限」との違いに注意
似た制度に、時間外労働の制限があります。これは、請求があった場合に、会社が1か月24時間、1年150時間を超える法定時間外労働をさせてはいけないという制度です。
(育児・介護休業法第17条・第18条 等)
整理すると、実務上は次の違いです。
| 制度 | 効果 |
|---|---|
| 所定外労働の制限・残業免除 | 所定労働時間を超える勤務が原則不可 |
| 時間外労働の制限 | 法定時間外労働を月24時間・年150時間以内に制限 |
短時間勤務者については、会社が特に注意すべきなのは前者です。
短時間勤務で定めた終業時刻を超える勤務は、法定労働時間内であっても「所定外労働」になります。
■会社が請求を拒める場合は限定的
育児・介護いずれも、事業の正常な運営を妨げる場合は、会社が請求を拒める余地があります。
厚労省も、所定外労働の制限について、手続上は原則として開始予定日の1か月前までの請求としつつ、事業の正常な運営を妨げる場合は拒めるとしています。
もっとも、この「事業の正常な運営を妨げる場合」は解釈上かなり限定され、単に業務が忙しい、人員に余裕がないといった理由のみでは足りないとされています。
ただし、この判断は厳格です。単に「忙しい」「人手不足」「その人に残ってもらった方が便利」という程度では足りず、担当業務の内容、繁閑、代替要員の確保可能性などから客観的に判断されます。(厚生労働省)
【まとめ】
- 残業免除の申出がない段階では、就業規則等の根拠があれば短時間勤務者への残業命令は可能
- 従業員が所定外労働の制限を請求した後は、原則として所定労働時間を超える勤務を命じることはできない
- 「事業の正常な運営を妨げる場合」を除き請求を拒むことは難しいため、業務分担や代替要員の確保で対応するのが実務上の安全策である

