Q.当社では、一部の業務を個人の方に業務委託でお願いしています。「業務委託契約書」も取り交わしているのですが、知人の経営者から「実態によっては労働者と判断されることがある」と聞きました。契約書があれば問題ないと考えていたのですが、何を確認すればよいのでしょうか。
A.労働者に当たるかどうかは、契約書の名称ではなく、実際の働き方で判断されます。労働者に該当すれば、労働時間や賃金などに関する法律が適用され、会社の義務も大きく変わります。契約書だけでなく、働き方の実態を確認することが必要です。
■なぜ労働者かどうかの確認が必要か
労働者に該当するかどうかによって、適用される法律と事業主の義務が大きく変わります。
労働基準法上の労働者に該当する場合、次のような点が問題になります。
- 最低賃金を下回っていないか
- 労働時間、休憩、休日のルールを守っているか
- 時間外労働に対する割増賃金を支払っているか
- 年次有給休暇を付与しているか
- 労災保険、雇用保険、社会保険の対象とならないか
本当は労働者であるのに業務委託として処理していると、後になって未払残業代や最低賃金との差額、保険料の遡及などが問題になる可能性があります。
■労働者性は「使用従属性」で判断される
労働基準法第9条は、労働者を、事業または事務所に使用され、賃金を支払われる者と定めています。
判断の中心は、他人の指揮監督下で働いているか、報酬がその労働の対価といえるかという点で、これを「使用従属性」といいます。厚生労働省は、主な判断要素として次の項目を挙げています。
- 依頼された仕事を本人が自由に断れるか
- 仕事の進め方について具体的な指示を受けているか
- 勤務時間や勤務場所を指定されているか
- 本人以外の人が代わりに業務を行えるか
- 報酬が時間給や日給など、働いた時間に応じて支払われているか
このほか、機械や器具を誰が負担しているか、特定の会社への専属性が高いかなども補強要素として考慮されます。
■契約から実態までを順に確認する
業務委託契約であっても、毎日決まった時刻に出勤し、上司から具体的な指示を受け、仕事を断ることが事実上できない場合は、労働者と判断される可能性があります。
反対に、成果物の納品を目的とし、仕事の方法や時間、場所を本人が決め、他社の仕事も自由に受けられる場合は、事業者性が強くなります。この場合は労働基準法ではなく、フリーランス法など取引上のルールが問題になります。
確認は、契約内容、実際の働き方、労働者性、適用される法令の順に進めることが大切です。厚生労働省は自己診断チェックリストを公開しており、労働基準監督署には相談窓口も設けられています。
【まとめ】
- 労働者に該当するかどうかで、適用される法律と事業主の義務は大きく変わる
- 労働者性は契約書の名称ではなく、使用従属性の有無を実際の働き方から判断する
- 業務委託であっても、指揮監督や時間・場所の拘束が強ければ、労働者と判断される可能性がある
業務委託で働く方がいる場合は、契約書の内容だけでなく、指示の出し方、時間や場所の拘束、報酬の決め方を一度点検してくださいね。
判断に迷うときは、早めに社労士などの専門家へ相談することをおすすめします。
