Q.当社での勤務を終えた後、そのまま副業先へ移動し、副業先から自宅へ帰る従業員がいます。この場合、帰りの通勤手当は当社が負担しなければならないのでしょうか。

A.法律上、会社が負担しなければならない義務はありません。通勤手当の支給範囲は就業規則や賃金規程で会社が定める事項であり、「自宅と当社の間」のみを対象とし、副業先から自宅までの交通費を支給しない運用とすることは可能です。ただし、規程での明確化と従業員への周知が欠かせません。

■通勤手当は会社がルールを決める手当

通勤手当は、自宅と勤務先との通勤に要する費用を補助する性質の手当です。支給するかどうか、どこまで・いくら支給するかは法令で義務づけられておらず、会社が就業規則や賃金規程で定めることになります。

そのため、副業先を経由して帰宅する場合の取扱いについても、法律上の一律の決まりはなく、自社の規程でどの範囲を通勤として扱っているかによって判断します。なお、副業先への移動時間は各職場に向かう通勤時間であり、当社の労働時間には当たりません。

■区間ごとに整理すると考えやすい

移動の区間を次の3つに分けて整理すると、取扱いが明確になります。

  • 自宅と当社の間:当社への通常の通勤であり、当社の通勤手当の対象とする
  • 当社と副業先の間:副業先への通勤にあたり、原則として当社の通勤手当の対象外とする例が多い
  • 副業先と自宅の間:副業先からの帰宅であり、副業先の通勤手当の範囲と考える

このように整理すると、副業先から自宅までの帰りの交通費は、当社の通勤手当としては支給しない取扱いとするのが一般的に考えやすいといえます。

■支給しない場合は規程の整備と周知を

支給しない取扱いとする場合は、ルールを明確にしておくことが重要です。

  • 通勤手当の対象経路を「自宅と当社の事業場との間の、最も経済的かつ合理的な経路・方法」に限定する
  • 副業・兼業先との間の移動にかかる費用は、通勤手当の対象外であることがわかるように定める
  • 副業・兼業の届出の際などに、副業先への交通費は対象外となる旨を従業員へ説明する

規程の定めがあいまいなままだと、従業員との間で認識のずれが生じ、トラブルにつながるおそれがあります。

【まとめ】

  • 通勤手当の支給範囲は法令上の義務ではなく、会社が就業規則・賃金規程で定める事項である
  • 副業先から自宅までの交通費は、当社の通勤手当の対象外とする整理が一般的である
  • 支給しない場合は、対象経路の限定と副業先への移動費用の除外を規程に明記し、周知することが重要である

副業・兼業をする従業員は今後も増えると見込まれます。まずは自社の賃金規程で通勤手当の対象経路がどう定められているかを確認し、あいまいな場合は早めに規程を見直したうえで、届出の機会に従業員へ説明しておきましょう。