第1章:なぜ今、採用が難しいのか?
●この章でわかること
- 中小企業の採用環境が厳しくなっている背景
- 採用成功の鍵を握る「求人票」の重要性
- ハローワーク活用のメリットと限界
(1)中小企業の採用が厳しくなっている理由とは?
「最近、なかなか応募が来ない…」
「せっかく来ても、すぐ辞めてしまう…」
このようなお悩みを抱える中小企業の方が増えています。
実際、少子高齢化の影響や、都市部への人材集中により、地方や中小企業では人手不足が常態化しています。
特に若年層の労働人口が減っており、かつてのように「募集を出せば人が集まる」時代ではなくなっています。
リクルートワークス研究所の公開資料によると、2025年に6,900万人の生産年齢人口(15~64歳)は、
2030年には6,700万人ほどに減少すると推計されています。
200万人というと、令和7年8月1日現在の岡山県の人口が約181万人であるため、まるまる岡山県が消滅するぐらいの数ということになります。
また、働き方の多様化により、求職者が重視するポイントも変化しています。
給与や休日等の「待遇」に加え、「仕事の内容の魅力・やりがい」「働きやすさ・柔軟は働き方」などが注目されるようになってきました。
こうした中で、何も考えず中小企業が「待遇」のみをアピールすることは、大企業の高い待遇と勝負することなり、ますます応募につながりにくくなっているのです。
(2)求人票は「最初の接点」、ここで差がつく
採用活動において、求職者と企業の最初の接点となるのが「求人票」です。
とくにハローワーク経由で応募する場合、求職者は求人票だけを見て判断します。
にもかかわらず、多くの求人票では「仕事内容がざっくりしすぎている」「魅力が伝わっていない」「条件がわかりにくい」といったケースが見られます。
ある特定の職種では、ハローワークの求人票では仕事を探さない方もいます。その理由の一つが求人票に書かれている内容の曖昧さ=真偽の見極めが伴うことであると私は推測しています。
人は「失敗したくない」という思いが強く働く生き物ですので、曖昧な記述は応募するかどうかの判断に大きく影響を及ぼします。
一方で、同じような業種・待遇であっても、「求人票の書き方ひとつ」で応募数が大きく変わることもあります。
つまり、求人票は単なる書類ではなく「求職者の視点に立ち、企業の想いを伝えるプレゼン資料」でもあるのです。
このように考え、求人票の作成に時間をかけることが、採用成功の近道といえるでしょう。
(3)ハローワークを活用するメリットと限界
ハローワークを活用する最大のメリットは、なんといっても「無料」で求人を出せる点です。
中小企業にとって、費用をかけずに広く告知できる手段として非常に有効です。
また、意外と知られていない活用法として、写真の掲載や求職者リクエスト機能があります。
とくに写真をアップロードしている事業所は、まだまだ少ないため使うことで他の事業所と一歩抜き出ることができます。
その他、求人広告と異なる最大の特徴は、職業相談員がついてくれるため、自社の条件に合った求職者を紹介してもらえることもあります
(残念ながらその逆があることも事実ですが……)。
そのため求人票を作成するときは、職業相談員の“目”も考慮し、アピールポイントを絞ることで、求人票の反応が高まります。
ただし、メリットがある一方で、求人票のフォーマットが限られているため、自由度が低いという側面もあります。
待遇表記や文字数制限があるため、「魅せ方」に工夫が必要です。
ハローワークの特性を理解し、限られた中で最大限に「伝える工夫」をすることが、成功のカギとなります。
●まずは「伝え方」を見直すところから
採用が難しい時代だからこそ、工夫次第で他社と差をつけることができます。
まずは求人票の見直しから始めてみませんか。
次章では、ハローワーク求人票の構造と基本ルールについて、わかりやすく解説していきます。