第2章:求人票は書き方次第
――「この会社で働く自分」が想像できるかどうか
「求人を出しても、応募がない」
「とりあえず、ハローワークに出してるんですけど…」
これは、私が採用支援をしている中小企業の経営者から、よく聞かれる言葉です。
でも、私はこうお伝えしています。
「求人票は、ただの“募集要項”ではありません」
「求人票は広告媒体です。広告を書くように作ることがコツです」
そして、実はこの求人票の内容次第で、応募が来るかどうか、さらには「どんな人が来るか」まで、ほとんど決まってしまうのです。
●求人票は「求職者目線」で作る
多くの企業がやってしまいがちなのが、「会社が伝えたいこと」だけを並べてしまうことです。
たとえば――
- 「創業50年の安定企業です」
- 「業績好調につき増員募集」
- 「やる気のある方歓迎」
これらは、決して悪い情報ではありません。
でも、求職者が本当に知りたいのは、もっと具体的なことです。
- 「どんな仕事をするのか?」
- 「どんな人たちと働くのか?」
- 「自分にもできそうか?」
- 「どんな1日を過ごすのか?」
- 「どんな雰囲気の職場なのか?」
つまり、求人票は「求職者が働くイメージを持てるかどうか」がカギなのです。
たとえば、ある事業所では、求人票に簡単な仕事内容だけであり、空白の目立つ内容でした。
当然、応募はゼロ。
そこで、次のよう内容に書き換えました。
「朝は●●業務からスタート。午前中に1回全員でミーティングも兼ね小休憩、午後から●●業務を行います。」
このように、1日の流れを具体的に書いただけで、早速、応募がありました。
●まずはハローワーク求人票から
中小企業にとって、ハローワークは今もなお、最も重要な採用チャネルのひとつです。
なぜなら、ほとんど費用をかけずに広く求人を出せるだけでなく、求職者の多くがまず最初にハローワークを利用するからです。
実際、私が支援している企業の多くも、ハローワーク経由での応募が最も多く、採用に結びついています。
ただし、ハローワークの求人票は、フォーマットが決まっているため、どうしても「型通り」になりがちです。
だからこそ、限られたスペースの中で、いかに「求職者の心に届く言葉」を使うかが重要になります。
たとえば、次のような工夫が効果的です。
- 「職種をキャッチコピー」として書く
- 「未経験でも安心して始められる理由」を書く
- 「1日の仕事の流れ」を具体的に書く
- 「職場の雰囲気」や「社員の声」を盛り込む
- 「どんな人が活躍しているか」を伝える
こうした情報があるだけで、求職者は「自分にもできそう」「ここで働いてみたい」と感じやすくなります。
●「job tag(じょぶたぐ)」の「求人ガイドシート」を活用する
求人票を作るときに、ぜひ活用していただきたいのが、厚生労働省が提供している「job tag(じょぶたぐ)」(職業情報提供サイト 日本版O-NET)の「求人ガイドシート」です。
このシートは、求人票を作成する際に必要な情報を整理するためのツールで、以下のような項目が含まれています。
- 仕事内容の詳細
- 求める人物像
- 職場の雰囲気
- 1日の仕事の流れ
- 教育・研修制度
- キャリアパス
- 福利厚生や働き方の特徴
このシートを使うことで、求人票に必要な情報を“言語化”しやすくなり、求職者にとって分かりやすく、魅力的な内容に仕上げることができます。
実際に、ある建設業のクライアントでは、このガイドシートを使って求人票を作成したところ、
「仕事内容が具体的で安心できた」「未経験でも挑戦できそうだと思った」といった声が応募者から寄せられ、採用につながりました。
●求人票は「会社のラブレター」
求人票は、いわば会社から求職者への“ラブレター”です。
「私たちの会社は、あなたのような人を待っています」
「あなたがここで働くことを願っています」
そんなメッセージが伝わる求人票こそ、応募につながるのです。
「とりあえず出しておく」ではなく、「この人に届いてほしい」と願いを込めて、1枚1枚の求人票を丁寧に作ることです。
私がかつて採用担当をしていたとき、「念(思い)」を入れて作成すると不思議と求職者に届いたことがあります。
これを聞かれて、「いや、たまたまでしょ」と思わましたか。私も正直、「たまたま」だろうと思うときもあります。
「このような人と働きたい」と思うこと。
それが、採用成功への第一歩です。
《まとめ》
求人票は書き方次第
・求人票は「求職者目線」で作る
・まずはハローワーク求人票から
・「job tag(じょぶたぐ)」の「求人ガイドシート」を活用する
・求人票は「会社のラブレター」
求人票は単なる募集要項ではなく広告。
求職者目線で書くことで求職者に響きます。
ポイントは「この会社で働く自分」が想像できるかどうか。
仕事内容や1日の流れ、職場の雰囲気など、求職者が知りたいと思う具体的な情報を盛り込みましょう。
そして求人票には、「あなたを待っています」という熱意を込めること。
それが理想の人材との出会いを生みます。