第3章 福祉現場に合った評価項目とフィードバックの視点
介護や福祉の現場では、「数字では表しづらい仕事」がたくさんあります。
利用者さんへのちょっとした気配りや、チームの雰囲気を良くする言動など、現場で本当に大事にされていることほど、評価の枠にうまくはめづらいのが実情です。
でも、それを「評価しにくい」で済ませてしまうと、
職員は
「大切にされていない」
「わかってもらえていない」
と感じてしまいます。
だからこそ、現場に合った評価の視点が大切なのです。
●定量評価と定性評価をバランスよく
まず、「定量評価」と「定性評価」という考え方をご紹介します。
定量評価は、例えば「業務件数」「単位の取得」「出勤率」「記録の提出率」など、数字で表せるもの。
一方、定性評価は「利用者との信頼関係」「チームでの協力姿勢」「思いやりのある言動」など、数字にならないけれど大切な要素です。
福祉・介護の現場では、この定性評価が非常に重要です。
「あの人がすると利用者さんが安心する」
「何かあった時、真っ先に動いてくれる」など、
目には見えないけれど確かに現場に貢献していることを、きちんと拾い上げて評価する視点が求められます。
定量評価もおろそかにしてはいけませんが、定量評価は単に数字としての結果を求めるのではなく、
その数値を設定した意味や、目標としての数値として定性評価とからめて設定することも重要です。
●見逃されやすい“現場力”に目を向けよう
たとえば、日々の声かけ一つとっても、利用者の表情や反応を観察して、その日の状態や状況に合わせた接し方をしている職員がいますよね。
そうした「場を読む力」や「ちょっとした配慮」は、現場では欠かせない力です。
これを評価項目に盛り込むには、項目自体を柔らかく設定することがコツです。
たとえば
「利用者との良好な関係構築ができているか」
「周囲との連携・協力に積極的か」など。
5段階などのシンプルな評価でも、「何を見て判断するか」の観点が明確であれば十分機能します。
●エピソードで伝えるフィードバックが効果的
そして、こうした定性評価は、フィードバックのときにこそ真価を発揮します。
単に「良かった」ではなく、
「この前○○さんの車椅子の調子が悪かったとき、すぐに気づいて対応してくれたね」
といった具体的な場面を伝えると、職員は「ちゃんと見てもらえている」と実感します。
評価の軸を、日々の仕事の中から拾い上げて言語化することで、職員との信頼関係も深まっていきます。
また、声掛けはできるだけ早く伝えることが重要です。
レスポンスよく声掛けすることで、職員は見てもらえていることをより実感できるのです。