第2章 採用前に考えるべき5つのこと
あなたが「人を雇おう」と思ったとき、最初にやるべきことは「求人を出す」ことではありません。
まずは、あなた自身の頭の中を整理すること。
なぜなら、ここが曖昧なまま採用を始めてしまうと、あとで「こんなはずじゃなかった…」と後悔することになるからです。
この章では、採用前に必ず考えておきたい5つのポイントを、一緒に確認していきましょう。
1 どんな仕事を任せたいか、はっきりさせる
「人を雇いたい」と思ったとき、まず考えるべきは「何のために」「何を任せたいのか」ということです。
これは意外と曖昧なまま進めてしまう人が多いポイントです。
たとえば、「事務を手伝ってほしい」と思っていても、
実際には…
- 電話対応
- 請求書の作成
- SNSの更新
- 来客対応
- 書類の整理
など、業務の中身は多岐にわたります。
これらをすべて任せたいのか、一部だけなのか。
今あなたがしている「1日の業務を書き出してみる」と、任せたい仕事が明確になります。
ほんの少し手を止めて、日次・週次・月次・年次の区分で行っている業務を付箋に書き出し、整理分類してみてください。
(実はこれ、業務改善にもなりますので、とても役に立ちます)
また、それは何のため任せたいのか、
-本業に集中するため、負担になっている雑務を任せたい
-事業の強みを強化したいため、ボトルネックになっている箇所を任せたい
-毎年行っているイベントでマンパワーが必要なため
目的が明確になっていれば、「どんな形で雇うか」も明確になります。
2 雇用形態はどうするのか
正社員、パート、アルバイト、業務委託、派遣社員等……選択肢はいくつかあります。
それぞれにメリット・デメリットがあります。
- 正社員:安定して働いてもらえるが、最初はコストが高くなる
- パート・アルバイト:柔軟に雇えるが、長期的な戦力にはなりにくい(担当業務と教育次第)
- 業務委託:専門性の高い仕事を任せやすいが、指示の出し方に注意が必要。価値観の不一致が起きる可能性もある
あなたの事業のフェーズや、任せたい仕事の内容によって、最適な雇用形態は変わります。
3 給与・時間・休日の決め方
採用するには、条件を決める必要があります。
でも、いきなり「給与はいくらにしよう」と考えるのではなく、まずは経営計画に基づき、「自分が出せる予算」を把握することが大切です。
- 月にいくらまで人件費に使えるか?
- その金額で、何時間働いてもらえるか?
- 週何日、何時間働いてもらうのが理想か?
また、給与だけでなく「勤務時間」「休日」「残業の有無」なども、あらかじめ決めておくことで、求人を出すときに迷いません。
給与の額や勤務時間は、労働市場において自社の優位性の確保に大きく影響します。
とくに給与は「予算」がありますので、その範囲内で決定しなければなりません。
そのため「地域相場」を意識し、少なくとも自社と同規模の同業他社と同等、もしくそれ以上とすることが決め方のひとつ基準になります。
4 採用にかかるお金と助成金
また、採用には、思った以上にお金がかかります。
たとえば…
- 有料の求人広告費(数万円〜数十万円)
- 面接や書類選考にかかる時間
- 雇用後の社会保険料や労働保険料(概ね15%ぐらい)
これらを事前に把握しておかないと、「こんなにかかるとは思わなかった…」と後悔することになります。
一方で、国や自治体の「助成金制度」を活用すれば、採用コストを抑えることも可能です。
たとえば、「キャリアアップ助成金」や「トライアル雇用助成金」など、条件を満たせば数十万円の支援を受けられることもあります。
ただし、100%受給できるものではありませんので、事前に要件を確認しましょう。
とくに「特定雇用開発助成金」はハローワーク(もしくは登録している職業紹介会社)を通じた紹介のみに限られています。
また、助成金を社労士に代行する場合、通常は手数料が発生します。
それ以外にも顧問契約の締結が必要な場合もあります。こちらも事前に確認しましょう。
5 人を雇う覚悟はできているか
最後に、いちばん大切なこと。
それは、「人を雇う覚悟があるか?」という問いです。
人を雇うということは、単に「仕事を手伝ってもらう」ことではありません。
その人の人生の一部を、あなたの会社が預かるということです。
- 教える時間をつくる覚悟
- うまくいかないときに向き合う覚悟
- 給与を払い続ける責任
もちろん、最初から完璧である必要はありません。
でも、「人を雇うって、こういうことなんだ」と理解しておくことが、採用の第一歩です。
「この人と一緒に働く未来を想像できるか?」が、覚悟のバロメーターです。
いっしょに会社を造り上げていける人を選ぶことが重要です。
《まとめ》
採用は“準備”が9割
採用は、求人を出す前の「準備」でほぼ決まります。
この章で紹介した5つのことを、しっかり考えておくことで、あなたの採用はぐっと成功に近づきます。
採用前に考えるべき5つのこと(おさらい)
- どんな仕事を任せたいか
- 雇用形態はどうするか
- 給与・時間・休日の条件
- 採用にかかるお金と助成金
- 人を雇う覚悟はできているか
次の章では、いよいよ「求人の出し方」について具体的に見ていきます。
あなたの想いが、ちゃんと伝わる求人を一緒につくっていきましょう。