Q.社員から「年休を買い取ってほしい」と申し出がありました。どのように対応すればよいでしょうか?
A.年次有給休暇の買い取りは原則として禁止です。ただし、一定の条件を満たす場合に限り、例外的に認められています。
まずは、どのケースに該当するのか状況を整理したうえで、社内ルールに沿って適切に対応しましょう。
■ 買い取りが認められる3つの例外
年休の買い取りが認められるのは、代表的には次の3つのケースに限られます。
①就業規則などで法定日数を超えて付与している「上乗せ分」
②退職までに消化しきれない残日数
③付与から2年が経過し時効で消滅した年休
在職中に「法定の年休をお金に換えたい」という申し出には、上記①~③に該当しない限り、原則として応じることができません。
上記①~③のいずれに該当する場合であっても、会社に買い取り義務が生じるわけではありません。
買い取りを行うかどうかは、会社の裁量で判断できます。
③の「時効消滅分」については、買い取りを前提として取得を制限したり、取得させない運用を行うことは禁止されています。
年休の本来の目的は、労働者を就業から解放し、心身の疲労回復を図ることです。
買い取りを安易に行うと取得抑制につながるおそれがあります。
■ 買い取り金額の考え方
買い取り額については、法令上の定めはなく、通常の賃金1日分と同額にする必要はありません。
そのため、例えば「通常の年休1日分の●割」「半額」などとすることも法令上は可能です。
もっとも、次のような観点から、事前に社内ルールを明確にしておくことが望ましいと考えられます。
・労働者の納得感(説明可能性)
・他の従業員との均衡・公平性
・個別対応のばらつきによるトラブルの防止
ルール化の方法としては、次のことが考えられます。
・就業規則や賃金規程に「買い取りの対象・金額水準・手続」を定める方法
・個別対応を前提としつつ、社内で判断基準を書面化しておく方法
■ 年5日取得義務との関係に注意
年次有給休暇の買い取りを行ったとしても、「休暇を取得させた」ことにはなりません。
年5日の取得義務は、必ず実際の休暇取得によって満たす必要があります。
この点を誤解し、買い取りで代替してしまうと、行政指導や30万円以下の罰金といったリスクが生じるため、注意が必要です。
労働基準法上、会社には「年休が10日以上付与される労働者」について、年5日を実際に取得させる義務があります。
この「年5日の取得義務」は、実際に休暇を取得させることによってのみ満たすことができ、買い取りで代替することはできません。
買い取りによって年5日の取得義務を満たしたと誤解し、結果として5日を取得させていなかった場合には、行政指導の対象となる可能性があります。
そのほか、労働基準法違反として、30万円以下の罰金または6か月以下の懲役といった罰則が科されるおそれがあります。
【まとめ】
・年休の買い取りは原則禁止。実務上認められるのは、代表的に「法定超過分」「退職時に取得しきれない未消化分」「時効消滅分」の3ケースであり、いずれの場合も会社に買い取り義務が生じるわけではない。
・買い取り金額に法定の定めはなく、通常の年休1日分を下回る額(例:半額)とすることも可能であるが、労働者の納得感や他の従業員との均衡を踏まえ、あらかじめ社内ルールを明確にしておくことがトラブル防止につながる。
・買い取りは年休の「取得」の代替にはならず、年5日の取得義務は実際の休暇取得によって満たす必要がある。
